エンターテインメントの文脈でも、言葉のリアリティは作品の質を決定づける要因となっている。Netflixのオリジナルドラマなどで描かれる現代のビジネスシーンでは、リアルな人間関係を反映したスピーディーで無駄のない会話劇が主流だ。過剰に飾り立てた敬語表現を多用するキャラクターは、往々にして「本心を隠した人物」や「頼りない中間管理職」の記号として演出されることすらある。
一方で、NHKオンデマンドで配信されている本格的な時代劇や社会派ドキュメンタリーを観ると、伝統的な格式を備えた正しい敬語が持つ圧倒的な威厳に圧倒される。武家社会の緊迫した謁見シーンで交わされる言葉の緊張感と、現代のスタートアップ企業を舞台にしたドラマで交わされるフラットな対話。この二つの極を比較することは、私たちが日々使っている言葉の立ち位置を客観視する格好のレッスンとなる。
映像の作り手たちは、登場人物の社会的立場、知性、心理状態をたった語尾ひとつのニュアンスで描き分ける。私たちが普段の業務で発する一言もまた、周囲に対して自分自身のプロ意識を強烈に演出しているという事実に、もっと自覚的であるべきだ。