自宅売却の報道が出た際、一部のSNSやネットメディアでは「再び借金苦に陥ったのではないか」という穿った見方が浮上しました。小林旭といえば、昭和の時代に経験した壮絶な金銭トラブルが語り草になっているため、そうした連想が働きやすかった側面があります。
昭和40年代から50年代にかけて、小林旭はゴルフ場開発事業などの大型リゾート開発に乗り出しました。しかし、オイルショックやバブル崩壊の余波を受け、計画は頓挫。関連会社の破綻によって連帯保証人となっていた彼のもとには、当時の金額で14億円、利息を含めると50億円規模とも伝えられる天文学的な負債がのしかかりました。
普通であれば自己破産を選択する水準の絶望的な負債でしたが、小林旭は逃げませんでした。個人事務所を経営しながら、年間100本を超える全国ツアー、連夜のディナーショー、映画やドラマへの精力的な出演を続け、自らの喉と肉体ひとつで数十億円の借金を完済したのです。この凄まじい執念と責任感は、日本の芸能史における伝説として語り継がれています。
したがって、今回の自宅売却を「金銭困窮による投げ売り」と捉えるのは完全な誤解です。過去の負債はとっくに清算されており、個人事務所の財務状況も堅実そのもの。今回の売却は、金融機関からの差し押さえ(競売や任意売却)ではなく、自らの意志で資産を現金化し、将来の相続トラブルを予防するスマートな資産防衛策だったのです。