僧帽弁閉鎖不全症の手術において、最も避けるべきは「恐怖心からくる先送り」と「情報不足による拙速な妥協」です。納得のいく結果を得るために、どのような基準で治療方針を固めるべきか、明確な指針を提示します。
【早期に積極的な手術(弁形成術・MICS・ダヴィンチ)を検討すべき人】
- 定期検査の心エコーで重症MRと判定され、すでに左室収縮末期径(LVESD)が40mmに迫っている、または心房細動が出現し始めている人。
- 心臓専門病院のハートチームから「確実に弁形成術で自己弁を修復できる形態である」と診断された人。
- 仕事や育児、スポーツへの早期復帰を望んでおり、胸骨骨折のダウンタイムを避けたい人(MICSやダヴィンチの適応がある施設での治療を推奨)。
【開胸手術を急がず、マイトラクリップや内科的加療を慎重に吟味すべき人】
- 80歳以上の超高齢者、または重度の腎不全・慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの併存症があり、開胸や人工心肺の使用に伴う合併症リスクが極めて高い人。
- 心筋梗塞や拡張型心筋症に起因する「二次性(機能性)僧帽弁閉鎖不全症」であり、弁そのものではなく左心室のポンプ不全が主因である人(まずはガイドラインに基づく厳格な心不全薬物療法が先行される)。
- セカンドオピニオンを受けておらず、現在の施設での弁形成成功率や代替アプローチ(カテーテルや低侵襲手術)の可能性について納得のいく説明を受けていない人。
心臓弁膜症の治療は、一度決定した術式を巻き戻すことができません。だからこそ、主治医の診断に疑問や迷いがある場合は、迷わず別のハイボリュームセンターへセカンドオピニオンを求める姿勢が極めて有効です。優れた心臓血管外科医ほど、他院への意見聴取を前向きに推奨する傾向にあります。