ネット上で囁かれる「ロイヒつぼ膏をこめかみに貼ると頭痛が劇的に軽快する」という噂は、東洋医学におけるツボ療法の理屈を都合よく切り取った誤解から生じています。こめかみ付近の窪みには、頭痛や眼精疲労の緩和に用いられる代表的な経穴「太陽(たいよう)」が存在します。ここを指圧すると血行が促され、重だるい頭重感が和らぐ経験を持つ人は少なくありません。
このツボ刺激の連想から、「強い温感を持つロイヒつぼ膏を太陽に直接貼れば、指圧以上の持続的な鎮痛効果が得られるのではないか」という安易な発想が生まれました。短時間であれば強烈なメントール感と温感刺激が感覚神経を麻痺させ、一時的に痛みが紛れたように錯覚するケースが報告されています。これこそが、ネット上で「神技」ともてはやされる体験談の正体です。
しかし、一時的な刺激のマスキング効果と根本的な症状緩和は全くの別物です。鎮痛消炎成分が痛みの原因物質を局所的に抑え込むメカニズムがあるとしても、こめかみという極めてデリケートな部位に強い温感成分を晒す代償はあまりにも大きく、医学的には極めて危険な行為に分類されます。