日本の伝統的な書状は、古くから確立された形式美の上に成り立っています。縦書きの手紙を美しく、かつ失礼のないものに仕上げるには、まず全体の骨格となる「前文」「主文」「末文」「後付け」の4部構成を厳格に守らなければなりません。構成要素を理解せずに書き進めると、要件の唐突感や敬意の欠落を招く原因となります。
それぞれの構成要素が果たす役割と配置の原則は以下の通りです。
- 前文(ぜんぶん):手紙の導入部。「頭語(拝啓など)」から始まり、1文字分のスペースを空けて「時候の挨拶」、そして相手の健康や活躍を喜ぶ「安否の挨拶」、日頃の支援への「感謝の挨拶」へと続きます。
- 主文(しゅぶん):手紙の本題。「さて」「このたびは」などの「起辞(起こしの言葉)」から書き始め、伝えたい用件を論理的かつ誠実に記します。話題を変える際は適切に改行を行います。
- 末文(まつぶん):手紙の結び。「結びの挨拶」として相手の今後の健康や繁栄を祈る言葉を述べ、行末を1文字分空けて対応する「結語(敬具など)」を配置します。
- 後付け(あとづけ):手紙の発信情報。「日付」「署名(差出人名)」「宛名(受取人名)」を記載します。日付は行頭から2〜3文字下げ、署名は行末に寄せて下揃えにし、宛名は行頭に揃えて最も敬意を示す位置に配置します。
縦書き特有のレイアウト作法として特に注意を払うべきなのが、改行と一字下げの縦書きルールです。前文の頭語は行頭の最上部に配置しますが、時候の挨拶に移る際や、主文の各段落の書き出しは必ず「1文字下げ」て記述します。一方、後付けにおける受取人の氏名は、敬意を表すために行頭から堂々と書き始めるのが礼儀です。
さらに重要な禁則事項として、「行末の泣き別れ」の回避が挙げられます。相手の氏名や会社名、役職名が途中で改行され、名前の後半が次の行の先頭に送られることは、相手を分断することを意味し、大変な非礼とみなされます。行末に相手の尊称が収まりきらない場合は、その行の手前で無理なく改行し、次の行の最上部に相手の氏名が丸ごと配置されるよう文字間隔を調整する配慮が求められます。