日付を数える際、多くの言語では「基数(1, 2, 3)」または「序数(1st, 2nd, 3rd)」に規則的な接尾辞を添えるだけで事足りる。しかし日本語では、上旬のほぼすべてと20日において規則的な音読み(いちにち、ににち等)が完全に排除されている。この特殊な日付読み方の真相を紐解く鍵は、飛鳥・奈良時代以前から列島に息づいていた大和言葉(和語)の固有数詞と、月齢を数える天体観測の習慣にある。
象徴的なのが月の始まりである1日を指す「ついたち」だ。この言葉は、新月が姿を現すことを意味する「月立ち(つきたち)」が音便化(き→い)したものである。夜空を見上げ、月が新たに立ち現れる瞬間を「月立ち」と呼び、それが転じて月の第1日そのものを指す名詞として定着した。学術的な日付の数え方語源と歴史的経緯を照合すると、中国から漢数字と音読みが導入される遥か以前から、日本列島の先住民は天幕の月相によって日々の経過を把握していた事実が浮かび上がる。
2日から10日にかけて現れる「ふつか」「みっか」「よっか」などの変異は、古代和語の基数「ひと・ふた・み・よ・いつ・む・なな・や・ここの・とお」に、日数を表す古語接尾辞「か(日)」が結合したものだ。ここで生じる音韻変化を整理すると、以下の明確な文法変化が作用していることが判明する。
- 2日(ふつか):「ふた(2)」+接尾辞「か」が融合し、母音交替によって「ふつか」へ定着。
- 3日(みっか):「み(3)」+促音(っ)+「か」。発声時のリズムを保つための促音便。
- 4日(よっか):「よ(4)」+促音(っ)+「か」。漢音の「し(死を連想させる忌み数)」を忌避した和語の残存。
- 8日(ようか):「や(8)」+「か」が「やか」から「やおか」、さらに長音化して「ようか」へ移行。
- 14日(じゅうよっか)/24日(にじゅうよっか):十の位は漢数字音読み(じゅう・にじゅう)を取り入れつつ、一の位のみ和語「よっか」を残存させた和漢混交のハイブリッド形態。
そして学習者を最も驚かせる20日の「はつか」は、古代日本語において「20」というまとまった数量を「はたち(二十)」と呼んでいた文化に根ざす。「はた」に日数を表す「か」が結びつき、「はつか」となった。つまり、不規則に見える変化の数々は無秩序な破綻ではなく、古代和語の固有体系が音読みの波に飲み込まれず生き残った言語的化石に他ならない。