「この世のすべての物質は分子でできている」——もしそう信じているなら、それは学校教育の過程で生じた典型的な思い込みです。実は、身の回りにある物質の多くは分子を作らない物質に分類されます。
理科の教科書では、物質はまず純物質と混合物に分かれ、純物質はさらに単体と化合物の違いによって分類されます。このとき、結合の仕方によって「分子を作るグループ」と「分子を作らないグループ」に明確に枝分かれします。
代表的な「分子を作らない物質」には、以下の3つのグループが存在します。
- 金属の単体(鉄、銅、アルミニウム、金など):無数の金属原子が電子(自由電子)を共有しながら規則正しくどこまでも連続して並んでおり、「ここからここまでが1つの塊」という区切りが存在しません。そのため、化学式では「Fe」「Cu」のように原子記号をそのまま書きます。
- イオンからなる物質(食塩/塩化ナトリウム、炭酸カルシウムなど):食塩(NaCl)は、ナトリウムイオン(Na⁺)と塩化物イオン(Cl⁻)が交互に無限のジャングルジムのように規則正しく結びついて結晶を作っています。特定の「NaとClのペア」が独立して浮遊しているわけではないため、分子とは呼びません。
- 共有結合の結晶(ダイヤモンド、黒鉛、二酸化ケイ素など):炭素原子(C)同士が頑丈に手をつなぎ合って巨大な網目構造を作っているため、1個の結晶全体が1つの超巨大な塊となっています。
家庭にある調味料で比較すると、砂糖(スクロース:C₁₂H₂₂O₁₁)は明確な「分子」として存在しますが、隣にある食塩(NaCl)は「分子を作らない物質」です。このように、分子構造を持つ物質は、気体全般や有機化合物、プラスチックなどに限られており、地球を形作る岩石や金属フレームは分子を持たない結合によって成り立っています。