高校の定期テストや大学入学共通テスト、二次試験で必ず問われる本文の主要箇所について、原文の響きを保ちながら正確な現代語訳と文法的な要点を整理します。
名場面1:巴御前との別れ
【原文】「おのれは女なれば、いづちへも行け。われは討死せんとて内裏を出づる時より思ひ定めたれば、討死せんずれば、ただ一所にて死なんと思へども、男の討死する所に女房を具したりけるよと、後の世までも人に言はれんこと、口惜しかるべし」
【現代語訳】「お前は女であるから、どこへでも行け。私は討ち死にしようと御所を出た時から覚悟を決めている。討ち死にするならば同じ場所で死のうと思うが、男が討ち死にする場に女を連れていたのだなと、後世まで人に噂されるようなことは無念で心残りだ」
【文法の鍵】「言はれん」の「れ」は受身の助動詞「る」の未然形、「ん」は婉曲・推量の助動詞「む」の連体形です。世間の評判を重んじる中世武士の倫理観が端的に表れている箇所として、記述問題で頻出します。
名場面2:義仲の最期と兼平の壮絶な自刃
【原文】「木曽殿、ただ一騎、粟津の松原へ駆け給ふが、正月二十一日、入相のばかりのことなるに、薄氷は張ったりけり、深田ありとも知らずして、馬をざっと打ち入れたれば、馬の頭も見えぬほどに引き入れられたり。(中略)兼平いかがしつらんとおぼしめし、ふり仰ぎ給へる内甲を、三浦の石田の次郎為久、追ッつて射たり」
【現代語訳】「木曽殿は、ただ一騎で粟津の松原へ馬を走らせなさったが、正月二十一日の日の暮れ頃のことで、薄氷が張っていたため、底なしの深い田があるともお気づきにならず、馬を勢いよく乗り入れなさったところ、馬の頭も見えないほど深く沈み込んでしまった。(中略)兼平はどうしているだろうかとお気遣いになり、振り返って見上げなさったその兜の内側(眉間)を、三浦の石田次郎為久が追いすがり、矢で射た」
【文法の鍵】「給ふ」「おぼしめし」は語り手から義仲への最高敬語(尊敬語)です。悲劇的な最期を遂げる英雄に対する哀悼の念が、文末の丁寧な敬語表現に色濃く反映されています。