ネット上の掲示板やSNS、知恵袋の投稿を検証すると、「朝一番に持ち込んだのに即日仕上げを断られた」「仕上がったスーツを受け取ったら独特の薬品臭が残り、プレスに違和感があった」といった生々しいトラブルの声が散見されます。なぜ現場でこうした摩擦が起きるのでしょうか。
都内近郊のクリーニング取次店で10年以上のキャリアを持つ店長は、近年の現場状況を次のように語ります。
「お客様からすれば『平日の朝10時に持ってきたのだから間に合うはずだ』と思われるかもしれません。しかし、現在の工場は人手不足とエネルギー効率化のため、1日に処理できる即日便の着数に上限(キャパシティ枠)を設けています。開店直後に持ち込みが集中すると、午前9時半の段階で当日の即日枠が上限に達し、受付を打ち切らざるを得ない日があります」
さらに、納期を決定づける巨大な変数がスーツクリーニング繁忙期の存在です。クリーニング業界の需要は極端な季節変動を描きます。
- 春の繁忙期(3月下旬〜5月連休明け):入社式、異動、冬物コートやウールスーツの衣替えが一気に押し寄せる年間最大のピーク。工場の処理量は平時の3〜4倍に跳ね上がる。
- 秋の繁忙期(10月〜11月):夏物スーツのしまい洗いと、秋冬物へのシフトが重なる第2のピーク。
この繁忙期期間中は、普段なら即日仕上げに対応している店舗であっても「特急便の受付を全面休止」していたり、店舗持ち込み仕上がり期間自体が通常「2日後」から「5日〜7日後」へと予告なく延長されていたりすることが常態化しています。リアルな現場のキャパシティを知らずに直前に駆け込むと、計画が完全に破綻するリスクを孕んでいます。