長年語り継がれているネットの噂の中には、現代の警察装備の実態と乖離した都市伝説が数多く存在します。その典型例を検証しましょう。
第一の誤解は、「覆面パトカーのボディカラーは白・シルバー・黒の3色しかない」という説です。確かに国費導入の大量調達車はリセールバリューや無難さを考慮してホワイトパールやシルバー、ブラックが多くを占めます。しかし、各県警が配備した車両には、ダークブルー、ガンメタリック、さらにはダークレッド(ワインレッド)のクラウンやWRX S4が実戦投入されています。「派手な色だから一般車だろう」という油断は命取りになります。
第二の誤解は、「ナンバープレートのひらがなで判別できる」という噂です。「『わ』や『れ』がレンタカーであるように、覆面パトカー専用のひらがな枠がある」という説が過去に囁かれましたが、これは完全なデマです。一般の自家用乗用車と同一のランダムなひらがな区分(さ、す、せ、そ等)が割り当てられており、文字だけで見分けることは不可能です。
では、なぜ多くのドライバーは、あからさまな特徴を持つ覆面パトカーの接近に気づけないのでしょうか。ここには人間の情報処理における「認知バイアス」が深く関わっています。
高速道路で追越車線を連続走行しているドライバーは、視覚意識の約80%以上を「前方の先行車や障害物」に奪われています。背後への意識は数%に低下し、ルームミラーに後続車が映っても、脳は「ただのセダンが一台ついてきている」と自動的に低優先度の情報として処理(確証バイアス)してしまいます。さらに、追尾のプロである交機隊員は、対象車のサイドミラーやバックミラーの死角となる「斜め後方45度」の位置に潜み、車列の間隙を縫って一瞬で真後ろに滑り込みます。ドライバーがミラーを再確認したときには、すでに等速追尾の測定が開始されているのです。