世界規模のインフラ崩壊を引き起こした元凶である人工知能「ラブマシーン」。知識欲の赴くままに暴走するこの自己進化型ハッキングAIを開発したのは侘助本人です。彼は開発したAIのテストプログラムを、莫大な契約金と引き換えにアメリカ国防総省(ペンタゴン)へ売却しました。
世界を震撼させるサイバーテロの兵器を生み出した侘助ですが、そこに世界征服や悪意といった思想は一切存在しませんでした。彼の開発動機はただ一つ、「持ち逃げした遺産の何倍もの金を稼ぎ、栄おばあちゃんに褒めてもらうこと」でした。
「ばあちゃん、俺すげえ金作ったんだ」「これでばあちゃんに恩返しができる」。悪びれる様子もなく笑顔で札束の話をする侘助の姿は、善悪の分別がつかない子どものような純粋さと残酷さを露呈していました。技術がもたらす社会的責任を顧みず、ただ母の愛を求める一心で危険な怪物を解き放ってしまった点に、侘助という男の危うさと悲劇があります。