本作を語る上で避けて通れないのが、当時のアニメーション業界に衝撃を与えた制作体制だ。宮崎駿や高畑勲という二大巨頭の手を離れ、若い世代の手でジブリ作品を作ろうという実験的試みからプロジェクトはスタートした。
監督を務めた望月智充は、当時30代前半という若さで大抜擢された。そしてキャラクターデザインと作画監督を務めた近藤勝也の繊細なタッチが、氷室冴子の世界観に完璧な視覚的肉付けを施した。スタジオジブリの歴史において、巨大な冒険劇ではなく「日常の機微」を徹底的に追求した本作は、当時の若手クリエイターたちの熱気と葛藤が凝縮された異色かつ至高の青春アニメとして結実したのである。