ネット上の情報では「メーカーのリカバリを実行して初期化すれば、個人データはすべて消えるので他人に譲渡しても安心」という言説が散見されますが、これは情報セキュリティの観点から見て極めて危険な誤解です。
Dellの標準リカバリ機能(DataSafe Local BackupやDBAR)が実行しているのは、ファイル管理テーブルの初期化と、工場出荷時システムイメージの「上書き展開」に過ぎません。ハードディスク内の空き領域(以前の写真、ブラウザのCookie、クレジットカード情報、社外秘ドキュメントなどが書き込まれていたセクタ)には、過去の磁気データがそのまま残留しています。市販の無料復元ソフトやフォレンジックツールを使用すれば、工場出荷状態に戻した直後であっても、数世代前の個人ファイルがいとも簡単にサルベージできてしまうのが現実です。
特にWindows 7時代のパソコンをフリマアプリで売却したり、知人に無償譲渡したり、不用品回収業者に引き渡す場合、初期化だけではプライバシー保護として不完全です。安全を期すのであれば、Linuxベースの起動メディア(USBブート)等を用いてハードディスク全体に「乱数またはゼロ」を最低1回以上上書きする完全消去(Zero Fill)を行うか、廃棄が目的ならば物理的にハードディスクを取り出してドリル穿孔や専用クラッシャーによる物理破壊を施すのが鉄則です。