映画化発表直後、SNS上には「また山﨑賢人か」「漫画の実写化は難しい」といった懐疑的な声が少なからず存在していました。しかし、劇場公開とともに評価は一変。「配役の解像度が異次元」「キャラクターがそのまま紙から抜け出してきた」と絶賛の嵐へと転じた背景には、キャスト陣による常軌を逸した役作りがありました。
杉元佐一を演じた山﨑賢人は、戦場を生き抜いた軍人特有の分厚い体躯を構築するため、徹底したウエイトトレーニングと増量を実施。撮影前の合同取材で語られた「杉元が背負う戦争の傷痕、泥臭さと優しさの二面性を身体全体で表現したかった」という言葉通り、寒中での激しい近接格闘アクションや、顔の傷跡に宿る凄まじい眼力で見事にファンを唸らせました。
ヒロインのアシㇼパ役を務めた山田杏奈は、アイヌ語の発音指導を何ヶ月も受け、弓矢の扱いや獲物の解体所作を習得。原作の魅力である凛とした気高さと、独特のユーモラスな「変顔」のギャップを絶妙な塩梅で表現し、実写映画のリアリティを支える精神的支柱となりました。
そして観客を最も震撼させたのが、鶴見中尉役の玉木宏です。額のホーロー看板と頭蓋骨の欠損から漏れ出す汁という奇抜な外見を完全に自らの血肉とし、低音ボイスによる甘美な語り口と突発的な暴力性の共存を怪演。舞台挨拶で「鶴見という怪物の持つカリスマ性に説得力を持たせるため、指先の動き一つまで計算した」と明かした通り、画面に映るだけで空気を支配する存在感を放ちました。
さらに、孤高の狙撃手・尾形百之助を演じた眞栄田郷敦の銃を構える完璧なフォームと虚無を帯びた視線、白石由竹役の矢本悠馬による軽妙洒脱なアドリブ演技、土方歳三役の舘ひろしが見せる重厚な殺陣など、主要キャストの全員が「ビジュアルの真似事」を超えた憑依型の演技を披露したのです。