長年通い詰める常連客すら不安に陥れた「来集軒 浅草 閉店」という不穏な噂。結論から申し上げますと、浅草の来集軒は閉店しておらず、移転も行っていません。明治43年(1910年)に創業した「来集軒製麺所」を前身に持ち、現在地である西浅草の地で暖簾を守り続けています。
では、なぜこのような噂が一人歩きしてしまったのでしょうか。飲食業界の動向に詳しい専門記者や現場の常連客の証言を突き合わせると、主に3つの背景が浮かび上がってきます。
第1の要因は、仕込み量の制限とそれに伴う「早仕舞い(スープ切れ)」の常態化です。歴史ある老舗ラーメン店では、仕込みの負担や店主の体調管理を考慮し、営業時間をランチタイム中心にシフトするケースが増えています。浅草の来集軒でも、夕方前の早い段階でスープが完売し暖簾が仕舞われる日があり、シャッターが閉まった店舗を目にした通行人が「閉店したのではないか」とSNS等につぶやいたことが発端となりました。
第2の要因は、近隣エリアにおける老舗町中華の相次ぐ閉業との混同です。浅草・上野の下町エリアでは、店主の高齢化や建物の老朽化に伴い、昭和の名店が惜しまれつつ幕を下ろす事態が続いています。そうした近隣店舗の閉店ニュースがネット上で錯綜し、「あの来集軒も閉まったらしい」という誤った伝言ゲームへと発展しました。
第3の要因は、厨房機器の修繕や店舗メンテナンスに伴う一時休業です。古い町中華の建物では定期的なダクト清掃や配管工事が欠かせず、数日から1週間ほど休業することがあります。公式SNSでリアルタイムに臨時休業を告知しない昔ながらの営業形態であるため、店頭の貼り紙を見られない遠方のファンが「長期休業=閉店・移転」と早合点してしまった側面が否めません。
「散歩の達人」などの地域カルチャー誌の取材に対し、店を切り盛りする3代目の落合秀美さんは「変わらぬ味を提供することをもっとも大切にしている」と語っています。100年を超える歴史の看板を背負いながら、今も実直に中華鍋を振るうその姿こそが、ネットのデマを打ち破る何よりの動言です。