回線は開通している。データも快適に流れる。しかし、標準の音声通話だけが使えない。この現象の裏には、タブレット端末における通信規格の基本的な設計思想が存在する。
NTTドコモをはじめとする大手通信キャリアが提供するiPad向けの料金プランは、本質的に「データ通信専用契約」だ。SIMカード自体には識別番号としての電話番号(11桁のMSISDN)が内部的に割り振られているものの、これはネットワーク上で端末を個体識別するための記号に過ぎない。音声通話を伝送するための交換機ルートが契約上閉じられているのだ。
加えて、iPadOSのシステム内部にはレガシーな音声通話(音声回線網を通じた回路交換通話)を制御するための基盤ソフトウェアが組み込まれていない。ハードウェア側にセルラーモデムが載っていても、音声を電話回線に乗せる仕組みそのものが排されている。