宝塚を退団した後の黒木瞳は、女優として大きな岐路に立たされていた。1986年の映画『化身』での体当たりの演技、そして1997年に社会現象を巻き起こした映画『失楽園』への主演は、彼女のキャリアを決定づける大勝負だった。
センセーショナルな濡れ場や大胆な役柄に対して、世間からは賛否両論の情熱と好奇の目が向けられた。しかし、夫である伊知地氏は彼女の表現者としての覚悟を誰よりも理解し、背中を押し続けたという。妻が女優としてリスクを恐れず挑戦できるよう、家庭という揺るぎない安全地帯を作り上げた彼の理解力こそが、名作誕生の影の立役者だったと言える。