大手フィットネスクラブの現場や、SNS・知恵袋といったコミュニティに集まる生々しい手記を検証すると、カロリー収支と運動に対する強烈な認知バイアスが浮き彫りになります。
都内のパーソナルジムに通う30代女性の克明な手記には、次のような苦悩が綴られていました。
「週に3回、トレッドミルで汗だくになって40分走り、マシンで筋トレを重ねていたのに、半年間で体重がまったく減りませんでした。トレーナーに食事記録を提出して指摘されたのは、『走ったから大丈夫』と自分を甘やかして帰りに買っていたコンビニのパスタサラダとスイーツ(合計約680kcal)の存在でした。ジムで消費できていたのはせいぜい250kcal程度。運動を始めたことで逆にカロリーオーバーを引き起こしていたのです」
この現象は、行動経済学や心理学で「ライセンシング効果(Moral Licensing)」と呼ばれる認知バイアスです。「運動という良い行動をしたのだから、高カロリーな食事という小さなご褒美を自分に許してもよい」と無意識に正当化してしまい、結果的に消費したカロリーを大幅に上回る熱量を摂取してしまう罠です。
ネット上のコミュニティでも「1食700kcalに抑えているのに痩せない」という嘆きが散見されますが、その実態を細かく紐解くと、調味料や間食のカフェラテ(1杯150〜200kcal)がカウントから除外されていたり、休日にドカ食いをして週間平均のカロリーを跳ね上げていたりするケースが後を絶ちません。