名宝の鑑賞とともに心を洗ってくれるのが、建仁寺が誇る名庭の数々です。なかでも本坊中庭に位置する「潮音庭(ちょうおんてい)」は、どこから眺めても完璧な調和を見せる「四面正面」の枯山水庭園として高く評価されています。
中央に立つ三尊石と苔の緑、周囲を取り囲む紅葉の木々が織りなす空間は、歩く方角や座る位置によってまったく異なる表情を見せます。縁側に腰を下ろし、静かに流れる風の音や木漏れ日を感じながら過ごす時間は、日常の慌ただしさを忘れさせてくれる至福のひとときです。新緑のまぶしい初夏や、深紅に染まる秋の紅葉シーズンは格別の風情を醸し出します。
一方、方丈の奥にある「〇△□乃庭(まるさんかくしかくのにわ)」は、禅の深遠な宇宙観を具現化した庭園です。丸は水、三角は火、四角は地を表し、万物の根源的な形態を示しているとされます。白砂の丸い植え込み、角張った井戸、庭全体の構成の中に散りばめられた幾何学的な造形は、見る者に「己とは何か」を問いかけるような深い静けさを宿しています。