明治神宮御苑の見どころは清正の井戸だけにとどまりません。歴史の重みと宮廷文化の風雅を伝えるスポットが巧みな動線上に配置されています。
北門から足を踏み入れて最初に出迎えてくれるのが、数寄屋造りの瀟洒な木造建築「隔雲亭(かくうんてい)」です。明治33年、明治天皇の思し召しによって昭憲皇太后の休息所として建てられた茶屋風の建物で、太平洋戦争の空襲で一度焼失したものの、昭和33年に有志の支援によって忠実に再建されました。縁側の向こうに広がる緑豊かな芝生と木々の借景は、都会の真ん中であることを完全に忘れさせてくれます。
隔雲亭から緩やかな坂を下ると、水鳥が遊ぶ「南池(なんち)」のほとりに「御釣台(おつりだい)」が現れます。明治天皇が昭憲皇太后とご一緒に釣りを楽しまれた場所であり、池から立ち上る心地よい水風と、水面に映り込む木々のリフレクションが格別の情緒を醸し出します。初夏には池一面にスイレンが可憐な花を咲かせ、訪れる人の目を楽しませてくれます。
そして、御苑の代名詞とも言えるのが、南池へ向けてなだらかに下る谷筋に広がる花菖蒲田です。明治天皇が昭憲皇太后のお慰めのために全国から優良種を集めて植えさせられたのが始まりとされ、現在では約150種・1,500株もの江戸系花菖蒲が保存・育成されています。明治神宮御苑の花菖蒲の見頃は例年5月下旬から6月下旬(ピークは6月10日前後)。青紫、白、絞り染めなど、一輪一輪に雅な名前が付けられた菖蒲が瑞々しく咲き乱れる姿は息を呑む美しさです。
また、秋が深まる11月下旬から12月上旬にかけては、明治神宮御苑の紅葉が見頃を迎えます。南池を取り囲むモミジやカエデが鮮やかな深紅や黄金色に染まり、水鏡に映り込む秋景は都内屈指の隠れた名所として高い評価を得ています。