今中氏の現在を語る上で欠かせないのが、NHK解説者としての揺るぎない存在感です。民放のバラエティ的な演出とは一線を画すNHKの中継において、今中氏の解説は「感情に流されず、投手の心理と配球の意図を正確に言語化してくれる」と野球通から高く支持されています。
その分析力の根底にあるのが、現役時代に打者を恐怖に陥れたスローカーブの理論です。150キロのストレートと同じ腕の振りから、あえて球速を100キロ未満に抑えて山なりの軌道を描かせる投球術は、徹底した指先の感覚と打者のタイミングを外す心理戦の賜物でした。
近年、プロ野球界では球速至上主義(155キロを超える剛速球やハードスライダー)がトレンドとなっていますが、今中氏は番組内で「スピードガン表示にとらわれすぎると、打者の手元でのキレや緩急の妙を失う」と警鐘を鳴らし続けています。自らの過酷な勤続疲労と肩肘の故障を経験したからこそ紡ぎ出されるリアリズムに満ちた言霊は、現役選手たちにとっても貴重な財産となっています。