日本語の漢字において、初学者が最も混乱しやすいポイントの一つが「阝(つくり・へん)」の左右の違いです。左側に置かれると「こざとへん(偏)」と呼ばれ、右側に置かれると「おおざと(旁)」と呼ばれます。見た目は全く同一の「阝」ですが、漢字の成り立ちにおけるルーツは完全に異なります。
言語学者や漢字研究者の文献調査によると、この2つの部首が同じ形になった背景には、中国の古代文字(篆書から隷書、草書)への書体変遷があります。元々は全く異なる形状をしていた2つの文字が、筆記の効率化や簡略化の歴史の中で、偶然にも同じ「阝」の形に収斂(合流)しました。
名称に「里」という文字が入っているため、「里(さと)という漢字に関係があるのか?」と誤解されがちですが、文字の語源としての「里」とは無関係です。「邑(おおざと)」の文字形状が里に似ており大きかったこと、それに対して左側の偏に付くものを「小里(こざと)」と通称したことが呼称の起源とされています。