太陽の塔「過去の顔」の真相と黒い太陽に秘めた岡本太郎の祈り

太陽の塔「過去の顔」の真相と黒い太陽に秘めた岡本太郎の祈り

太陽の塔「過去の顔」の真相と黒い太陽に秘めた岡本太郎の祈りの最新情報をお届けします。最新トレンドが詰まっています。

太陽の塔の背面に回り込むと、爽やかな芝生広場とは対照的な、重苦しいまでの圧迫感を放つ直径約8メートルの黒い円盤が視界に飛び込んできます。これこそが、岡本太郎が「過去」の象徴として塔の背中に刻み込んだ「過去の顔(黒い太陽)」です。中心部には深く落ち窪んだ目と引き結ばれた口が荒々しい筆致のように立体化され、その周囲からは波打つ黒いコロナ(炎)が直径約14メートルにわたって赤と白の稲妻状の光背とともに放射状に広がっています。

この背面デザインが放つ異様な質感の正体は、日本六古窯の一つとして名高い滋賀県の伝統工芸「信楽焼(しがらきやき)」です。当時の職人たちが岡本太郎の要求する「ぬめり気のある深い漆黒」を再現するため、試行錯誤を重ねて焼き上げた特注の陶板が約1,300枚も隙間なく貼り合わされています。単一の黒ではなく、窯の炎が生み出した微妙な釉薬のムラやざらついた肌合いが、まるで生き物の皮膚のような生々しさを醸し出しています。

多くの来訪者が「背中から視線を感じて怖い」「正面の明るさとの落差に寒気がした」と口を揃えるのは偶然ではありません。岡本太郎は、人間が背後に対して本能的に抱く警戒心や無防備さを熟知した上で、鑑賞者の背後を射抜くようにこの黒い太陽を配置しました。光り輝く未来ばかりを見つめ、自らの足元や背後に広がる歴史を顧みない近代人に対し、背後から無言の威圧を投げかけているのです。

小林 直樹
著者

小林 直樹

シンプルで洗練された住まいづくりとインテリアコーディネートのアイデアを提案しています。