なぜトッププロが下着を脱ぎ捨てるに至るのか。その理由は、卓球という競技特有の過酷な運動特性に深く結びついています。水谷氏の証言およびスポーツ機能学の観点から分析すると、主に3つの明確なメリットが浮かび上がります。
第1に、股関節まわりの可動域の最大化と締め付け感の排除です。卓球は常に深い前傾姿勢を保ち、左右へ瞬間的に激しくステップを踏み込むスポーツです。骨盤から大腿部にかけての下着のゴムや縫い目は、わずかな引っかかりを生み出します。水谷氏のような超一流選手にとって、その「コンマ数ミリの抵抗感」がフットワークの遅れや違和感につながるため、締め付けをゼロにすることが最優先されました。
第2に、汗による張り付きと摩擦(股擦れ)の防止です。試合中、選手は大量の発汗を伴います。下着を履いていると、汗を吸った綿や化繊生地が重くなり、皮膚とユニフォームの間で二重の摩擦を引き起こします。これが激しいフットワーク時の不快感や皮膚トラブルの原因となります。下着を排して通気性の高いゲームパンツを直接着用することで、皮膚と生地の摩擦を最小限に抑え、常にドライで軽快な状態を維持できます。
第3に、皮膚感覚の鋭敏化とゾーン状態への没入です。アスリートが極限の集中状態に入るとき、五感は極めて敏感になります。下着の縫い目が肌に当たる感覚や、動くたびに生じる生地のズレは、無意識のうちに脳のリソースを消費させます。余計な刺激を極限まで削ぎ落とし、ボールとラケットの感覚だけに没頭するための環境作りとして「ノーパン」が機能していたのです。