レイザーラモンHGが日本全国のお茶の間へ持ち込んだインパクトの根底には、海外のアンダーグラウンドで育まれた特異な男性同性愛カルチャーの記号が存在します。バラエティ番組ではギャグの舞台装置として消費されましたが、本来の「ハードゲイ」という概念は、20世紀後半の欧米におけるレザーサブカルチャー(Leather subculture)と不可分な関係にあります。 伝統的に「女性的・繊細」とステレオタイプ化されがちだった同性愛者像に対し、1970年代のサンフランシスコやニューヨークでは、バイカー(オートバイ乗り)、ミリタリー(軍人)、肉体労働者といった極めて男性的で無骨なイメージをあえて誇張して取り入れるカウンターカルチャーが生まれました。フィンランドの著名な画家トム・オブ・フィンランド(Tom of Finland)が描いた、筋肉隆々でタイトな黒革のライダースジャケットやキャップを身にまとった男性像がその典型例です。 欧米におけるこの潮流は、自らの性的指向を堂々と主張し、既存のヘテロノーマティブ(異性愛規範)な社会に対する反逆と連帯を意味するプライドの象徴でした。一方で、BDSMやフェティシズムの文脈を色濃く含んでおり、一般社会からは「ディープで硬派なゲイカルチャー」、すなわちハードゲイとして認知されてきた歴史的背景があります。 住谷正樹氏が創り出したキャラクターは、この海外のハードコアなレザーアイコンを視覚的なギミックとして大胆にデフォルメし、日本のプロレス的過剰さと融合させたものでした。本場欧米の文脈を知る者にとっては背筋が凍るほどアヴァンギャルドなモチーフを、白昼堂々の地上波キー局で子どもたちが真似する国民的ギャグへと昇華させた点において、希代のポップアイコン化劇だったといえます。
ハードゲイとは何だったのか?元ネタの真実とレイザーラモンHgの現在
•
•
1分で読める