現場での混乱を断ち切るために、まずは極めて明快な公式を把握する必要があります。IVH(Intravenous Hyperalimentation)は「静脈栄養療法」という治療行為そのものを指し、CV(Central Venous)またはCVC(Central Venous Catheter)は「中心静脈カテーテル」という医療機器・物理的な管を指します。つまり「食事(治療法)」と「ストロー(道具)」ほどの決定的な違いがあるのです。
歴史的に見ると、1960年代後半に米国の外科医スタンリー・ダドリック(Stanley J. Dudrick)博士らが開発した高カロリー輸液法が「IVH」と呼ばれ、日本国内にも爆発的に普及しました。当時は「太い血管に管を入れて高カロリーの栄養を入れる行為」全体を一括してIVHと呼ぶ臨床慣習が定着してしまったため、ベテラン医師や看護師の間で「管そのもの」をIVHと呼ぶ悪習が残存することになりました。
あわせて整理しておきたいのがCVとCVCの違いです。厳密には、CVは「中心静脈(大静脈などの太い血管の解剖学的位置)」という概念であり、CVCはその血管内に先端を留置する「カテーテル(管)」を指します。臨床現場ではほぼ同義として扱われていますが、カルテや指示受けにおいて「CV」と略される場合、実質的には中心静脈カテーテル(CVC)を指していると理解して差し支えありません。