『ファーストクラス』の社会的功績として絶対に外せないのが、モデル出身の菜々緒を一躍「名悪女女優」へと押し上げた点です。彼女が演じた川島レミ絵のキャラクター造形は、当時のテレビドラマにおける悪役の概念を根底から塗り替えました。
特に視聴者を釘付けにしたのが、表面上はにこやかに会釈しながら、画面が白黒反転して高速でまくしたてられる「心の声(毒舌モノローグ)」です。「私以外の全員、粗大ゴミ」「ペラッペラなプライドお疲れ様です」「身の程を知れ、このドブネズミが」といった容赦のないフレーズは、放送翌日の学校や職場の雑談、そして黎明期のネットカルチャーを席巻しました。視聴者コミュニティの生ログを検証しても、「陰湿ないじめドラマなら見るのをやめていたが、レミ絵の台詞があまりにもリズミカルで清々しいギャグとして機能していたため、爽快感すら覚えた」という分析が圧倒的多数を占めています。
当時、先行研究や心理学論壇でも「マウンティング」という語は存在していたものの、このドラマが「序列争いを自覚的に楽しむプロレス」として可視化したことによって、一般名詞として完全に定着しました。悪女たちが放つ台詞の数々は、単なる攻撃ではなく、生き馬の目を抜く業界でサバイブするための「鎧」としてのリアリティを帯びていたのです。