1988年、東京都豊島区で発覚した「巣鴨子供置き去り事件」。それは日本の社会福祉の盲点と、都市の冷淡さを白日の下に晒した残酷な事件だった。父親が異なり戸籍すら与えられていなかった子供たち。母親は新しい愛人との生活のために自宅を離れ、わずかな生活費だけを置いて失踪した。
是枝裕和監督による映画『誰も知らない』は、この悲惨な実際の出来事を下敷きにしながらも、子供たちの持つ無垢な輝きや生活の色彩をすくい取るように緻密に描写した。実話映画として制作されつつも、ドキュメンタリー出身の監督特有の眼差しが、単なる告発ドラマにとどまらない深い叙情性を生み出している。