海岸線に佇むグレーの巨塊。その隙間を覗き込んだとき、背筋が凍るような感覚を覚えたことはないだろうか。海上保安庁が公表した2026年最新の海難事故データによると、沿岸部における転落事故の中でも、消波ブロック周辺での事故は極めて救命率が低く、重症化または死亡に至る割合が著しく高いことが指摘されている。
落下の恐怖の本質は、内部の苛烈な環境にある。ブロックの表面には無数の鋭利なカキ殻やフジツボが密着しており、転落の瞬間、衣服は破れ皮ふは深く切り裂かれる。さらに、海面下へと続く隙間は外光が遮られて真っ暗になり、叩きつける波の音だけが反響する。水面下で揉まれると上下左右の感覚が麻痺し、どちらが海面なのかさえ判別不能になるのだ。この逃げ場のない恐怖こそが、人々の噂を裏付ける真実である。