長年にわたり、さつまいもの絶対王者として君臨してきたのは鹿児島県でした。シラス台地と呼ばれる水はけの良い火山灰土壌が広がる南九州は、稲作に適さない土地を有効活用する作物として江戸時代からさつまいも栽培を根付かせてきた歴史があります。
かつて鹿児島県の年間収穫量は30万トンを優に超え、2位の茨城県にダブルスコア近い大差をつけていました。しかしここ数年、鹿児島県と茨城県の収穫量格差は急速に縮小し、作況や集計時期によっては月次ベースでの逆転現象すら取り沙汰される局面を迎えています。
この猛追劇の背景には、消費市場のニーズを的確に捉えた茨城県の綿密な産地戦略があります。茨城県(特になめがた地域やひたちなか市周辺)は、単に生芋を出荷するだけでなく、高付加価値な「干し芋(乾燥芋)」の全国シェア9割以上を握る加工インフラを構築しました。さらに近年の焼き芋ブームに乗って「紅はるか」の大規模栽培と徹底した定温貯蔵体制を確立し、通年で高品質な甘い芋を安定供給できる強固なサプライチェーンを作り上げたのです。