ネット上のグルメコミュニティやSNSで今なお根強く囁かれているのが、「朝引きの超新鮮なレバーなら中が生焼けでも当たらない」「信頼できる専門店から仕入れた上質な肉ならレアでも安全」という言説です。しかし、食品微生物学の観点から言えば、この「新鮮神話」は完全な思い込みであり、誤解に過ぎません。
一般的な筋肉部位(ロースやモモなど)の場合、健康な家畜の筋肉内部は無菌状態に保たれており、解体時の表面汚染さえ防げばレアステーキが成立します。ところがレバーは体内の代謝・解毒を司る臓器であり、血管や胆管が網の目のように張り巡らされています。家畜が腸管内に保持しているカンピロバクターやサルモネラ菌、あるいはウイルスは、血流や胆汁を介してレバーの「組織の深部」にまで元から入り込んでいるのです。
つまり、たとえ数分前に屠畜されたばかりの究極の鮮度を誇るレバーであっても、内蔵された病原微生物の存在確率は変わりません。鮮度が証明するのは「腐敗臭がしないこと」と「ドリップが出ておらず食感が良好なこと」だけであり、病原菌がゼロである保証には一切ならないという事実を強く認識する必要があります。