「私はコーヒーを1日2杯しか飲まないから安全だ」と信じ込んでいる人ほど、重大な過剰摂取の罠に陥っています。厚生労働省のカフェイン注意喚起資料や日本中毒学会の報告書でも指摘されている通り、カフェインはコーヒー以外のあらゆる飲食品・医薬品に高濃度で潜伏しているからです。
筆頭に挙げられるのが、若年層からビジネスパーソンまで広く定着したエナジードリンクのカフェイン量です。国内で流通する主要な缶飲料には、1本あたり100mg〜150mg、大容量ボトルでは200mg近いカフェインが配合されています。甘味料と炭酸の爽快感によって短時間で飲み干してしまうため、コーヒーを飲むときのような「ゆっくり味わうブレーキ」が働きません。ここに午前のコーヒーや食後の緑茶が加われば、あっという間に1日の許容量を軽々とオーバーします。
見落とされがちなのが、風邪薬や頭痛薬、眠気防止薬といった市販のOTC医薬品です。鎮痛補助効果や眠気防止を目的として、1回分に100〜200mgの無水カフェインが含有されているケースは珍しくありません。「頭痛を抑えるために鎮痛薬を飲み、眠気覚ましにエナジードリンクを流し込む」という行為は、意図せずして短時間に致死域へ近づく危険な化学的負荷を心臓と中枢神経に強いることになります。
さらに深刻なのが、カフェインが睡眠に与える影響です。体内に入ったカフェインの血中濃度が半減するまでには、成人の場合でおよそ4時間から6時間を要します。午後3時や夕方に摂取したカフェインは、就寝する深夜になっても体内を循環し続け、睡眠深度を司る徐波睡眠(深いノンレム睡眠)を劇的に阻害します。その結果、「寝たはずなのに朝から疲労感が抜けない」状態に陥り、翌朝再びカフェインに頼らざるを得なくなるという悪循環を形成するのです。