戦術的な強さだけでなく、プレイヤーの心を捉えて離さないのが、緻密に練り上げられたキャラクター造形です。その魅力を極限まで高めているのが、FGO酒呑童子の声優を務める悠木碧氏による、底知れぬ妖艶さを湛えた京都弁の演技です。
当時のインタビューやメディア取材において、悠木氏は「可愛らしさの中に、絶対に人間と分かり合えない鬼の冷酷さと残酷さを滲ませる」という難度の高いディレクションに応えた裏話を明かしています。ねっとりと鼓膜を撫でるようなウィスパーボイスは、戦闘中のボイスやマイルーム会話のみならず、宝具演出の「ごくり、と呑み干して…」という囁きに至るまで、唯一無二の魔性を宿しています。この演技を聴くためだけに召喚したという声がSNS上で後を絶たないのも頷けます。
そして物語の根幹において多くのファンを魅了してやまないのが、酒呑童子と坂田金時の経緯にまつわる深遠な関係性です。大江山の鬼退治において、源頼光や渡辺綱らとともに酒呑童子を討ち果たした伝説の英傑・坂田金時。カルデアにおいて酒呑童子は、金時を「金時(きんとき)」と呼び、執拗にからかい、時に甘やかし、時にその骨を砕かんとするほどの狂おしい執着を見せます。
「地獄界曼荼羅」などのメインストーリーでも描かれた通り、二人の関係は単純な「仇敵」でも「恋仲」でもありません。人ならざる鬼の価値観において、金時は「もっとも愛おしく、もっとも美しく喰らい尽くしたい存在」であり、金時にとっても彼女は拭い去れぬ過去の傷痕であり続けます。その関係性の断片は、絆レベル10で獲得できるFGO酒呑童子の絆礼装「神便鬼毒の盃」のテキストにも痛烈に刻み込まれています。毒酒によって謀殺された己の最期を呪うのではなく、むしろその毒酒の盃に愛憎の記憶を浮かべる彼女の在り様は、伝承文学と現代エンターテインメントが見事に融合した傑作の人物描写と言えます。