目の前に新鮮な餌を出しても全く反応しない、あるいは嫌がって前脚で払いのける行動が見られた場合、飼育者が慌てて無理に食べさせようとするのは極めて危険です。カマキリが拒食を示す背景には、明確な生物学的理由が存在します。
1. 脱皮前の準備期間(最も多い理由)
幼虫が脱皮を行う2〜3日前になると、消化管を空にするために完全に餌を受け付けなくなります。この状態を「脱皮前拒食」と呼びます。
【脱皮前の兆候チェックリスト】
- ケージの天井や高い位置の枝にぶら下がり、ほとんど動かなくなる
- 体色がややくすみ、全体的に白っぽく粉を吹いたような質感になる
- 複眼(目)の色が濁り、光沢が失われる
- 餌を近づけると威嚇するか、鬱陶しそうに手で払いのける
脱皮準備に入っている個体に生きたコオロギを同居させたままにすると、脱皮中の無防備なカマキリがコオロギに噛まれて命を落とす「逆捕食事故」が発生します。拒食が見られたら即座に生き餌をケージから取り出してください。
2. 満腹状態および消化不良
カマキリの腹部がパンパンに膨らんでいる場合、消化器官に前回の食事が残っています。完全に消化が終わるまで数日間は何も食べないのが正常です。無理に給餌を続けると、体内で餌が腐敗して死に至る「自家中毒」を引き起こします。
3. 餌に対する恐怖心とサイズ不一致
一度餌に噛みつかれて痛い思いをした個体や、自分よりも大きすぎる獲物を目の前に出されたカマキリは、防衛本能から餌を極度に怖がるようになります。この場合は、餌のサイズを一回り小さくするか、頭部を潰して動きを鈍らせたコオロギをピンセットで口元へ運ぶリハビリが必要です。
4. 室温の低下と代謝の低下
カマキリは変温動物であるため、気温が18℃以下に下がると著しく活動量が低下し、消化酵素が働かなくなるため餌を食べなくなります。秋口や冬場に食欲が落ちた場合は、パネルヒーター等でケージ内を22〜26℃に加温してください。