「京都の秋=紅葉」という固定観念に囚われている旅行者は、9月の京都が誇る知られざる自然美や限定公開の存在を見落としがちです。オーバーツーリズムが常態化する有名観光地を離れ、静謐な京都の息吹を感じられるスポットを紹介します。
第一に挙げるべきは、京都御所の東隣にひっそりと佇む梨木神社の萩(はぎ)まつりです。「萩の宮」として知られる境内には、約500株の赤紫や白の萩が咲き乱れます。参拝者が自らの願いや俳句を記した短冊が萩の枝に結びつけられ、初秋の微風に揺れる様子は絵画のような風情を漂わせます。上方舞や狂言の奉納、京都三名水の一つ「染井の水」で点てられるお茶席など、京都の上質な美意識を混雑知らずで堪能できる極めて貴重な空間です。
第二の注目は、毎年9月第4月曜日に催される安井金比羅宮の櫛(くし)まつりです。縁切り神社として知られる同宮ですが、この日は使い古した櫛やかんざしに感謝を捧げる「櫛供養」が執り行われます。見どころは神事の後に行われる「時代風俗行列」です。古墳時代、平安、鎌倉、江戸、明治、大正に至るまでの各時代の髪型と正確な装束を身にまとった女性たちが祇園界隈を練り歩きます。京都美容文化クラブの保存活動によって支えられているこの行事は、美への執念と服飾文化の変遷を間近で鑑賞できる隠れた傑作イベントです。
さらに見逃せないのが、京都・秋の特別拝観のプレオープンとも言える9月下旬の動向です。大徳寺や妙心寺の塔頭寺院、東福寺の普段非公開の庭園など、11月の紅葉最盛期には入場規制がかかるような名刹が、9月下旬から特別公開の扉を開き始めます。青もみじと枯山水が織りなす緑陰の美しさは、混雑に揉まれることなく静寂の禅精神に対峙できる贅沢な時間をもたらします。