かつて全国の主要都市やファッションビルを席巻したHMVが、なぜこれほどまでに店舗数を減らしたのか。その主因は、音楽鑑賞メディアの急速なデジタルシフトと、旧来型CDメガストアの収益構造の崩壊にあります。
2000年代初頭の着うたブームやiTunesの台頭、さらに2010年代以降のSpotifyやApple Musicといったストリーミング配信の普及により、国内の音楽ソフト(CD・DVD)生産金額はピーク時から半減以下へ落ち込みました。床面積の広い大型店舗で大量のCD在庫を抱えるビジネスモデルは、高額な家賃負担と在庫リスクが重くのしかかり、急速に採算が悪化していったのです。
その象徴となったのが、2010年8月に惜しまれつつ閉店した「HMV渋谷(渋谷センター街・one-oh-nine内)」でした。カルチャーの発信拠点として日本のポップミュージックシーンを牽引した聖地の幕引きは、ひとつの時代の終焉を印象づけました。業界関係者の証言によると、当時の運営元は巨額の赤字を抱え、抜本的な事業整理を迫られていたといいます。
転機となったのは、2010年秋のHMVローソン(株式会社ローソン、現ローソンエンタテインメント)による買収劇です。チケット販売事業(ローソンチケット)を持つローソングループと統合されたことで、HMVは単なる音源小売店から、エンタテインメントの「リアル拠点」へと舵を切ることになりました。不採算の通常店を整理する一方で、商業施設内の効率的な店舗網へとスクラップ&ビルドを推し進めた結果が、現在の店舗構成につながっています。