中島美嘉を活動休止にまで追い込んだ両側耳管開放症(りょうそくじかんかいほうしょう)とは、一体どのような疾患なのでしょうか。耳鼻咽喉科の専門領域における知見から、その過酷な症状と発症背景を紐解きます。
通常、鼻の奥と中耳をつなぐ「耳管」は普段は閉じており、唾液を飲み込んだりあくびをしたりした瞬間にだけ開いて気圧を調整しています。しかし耳管開放症を発症すると、この管が開きっぱなしの状態になってしまいます。その結果、以下のような過酷な症状が患者を襲います。
- 自声強聴(じせいきょうちょう):自分の話し声や歌声が、頭の中でマイクを通して大音量で反響しているかのように響き渡る。
- 呼吸音聴取:自身の呼吸の吸気・呼気音が「スー、ハー」と耳元で直接スピーカーから流れているかのように鼓膜を震わせる。
- 耳閉感:耳の中に水が入ったような、あるいは飛行機で急降下したときのような強烈な圧迫感が持続する。
- 音程の喪失:外から聴こえる伴奏の音と、頭の中で歪んで響く自分の声の乖離が激しくなり、正確なピッチ(音程)を耳で認識できなくなる。
一般人であっても会話に支障をきたし、著しい精神的ストレスを被るこの疾患が、ミリ単位の音程制御を要求されるトップシンガーの両耳を襲ったのです。発症の原因としては、急激な体重減少(激痩せ)による耳管周辺の脂肪組織の萎縮、過密スケジュールやプレッシャーによる自律神経の失調、ホルモンバランスの変動などが複合的に絡み合っていると指摘されています。当時の中島美嘉は映画『NANA』の大ヒットや連年の全国ツアーで多忙を極めており、極限状態まで身体を酷使していた時期と重なっていました。