見城徹のキャリアを語るうえで避けて通れないのが、角川書店のカリスマであった角川春樹との出会いと決別です。廣済堂出版から角川書店へ移籍した見城は、文芸誌『月刊カドカワ』の編集長に就任すると、従来の出版界の常識を覆す破天荒な編集方針を打ち出しました。北方謙三、村上龍といった硬派作家だけでなく、ミュージシャンや俳優を積極的に誌面へ起用し、雑誌の部数を飛躍的に押し上げたのです。
飛ぶ鳥を落とす勢いで取締役編集部長まで上り詰めた見城徹でしたが、1993年、出版界を揺るがす未曾有の事態が発生します。当時の角川書店社長であった角川春樹がコカイン密輸事件で逮捕されたのです。会社が激震に見舞われ、社内での派閥抗争や経営体制の刷新が急速に進むなか、見城は自らの美学と誇りを賭けて退社を決断します。このとき見城の背中を押したのは、かつて苦楽を共にした作家たちとの絆であり、「自分の責任ですべてを引き受ける城を持ちたい」という剥き出しの飢餓感でした。
1993年11月、見城はわずか数名の部下を引き連れて幻冬舎を設立します。創業翌年の1994年11月に放った第1弾ラインナップは、五木寛之、北方謙三、村上龍、山田詠美、吉本ばなな、天童荒太という超大物作家6人による書き下ろし単行本でした。出版社の看板もない無名の弱小出版社が、大手出版社の看板作家たちを口説き落とし、全点ベストセラーを叩き出すという前代未聞の快挙を成し遂げた瞬間でした。