物語の根底にある設定を読み解くうえで不可欠なのが、星の子の正体と落ちる意味の理解です。『ハウルの動く城』の世界において、夜空を駆ける流れ星は単なる鉱物の塊ではなく、固有の生命を宿した「星の子(流れ星の精霊)」として描写されます。
この星の子には過酷な宿命が課せられています。大気圏を裂いて地上へ落下した星の子は、地面に激突した瞬間に冷え切り、命を落として石のような燃え殻になってしまいます。作中で美しく尾を引いて降り注ぐ流れ星の群れは、言い換えれば「死に向かって地上へ突進している命の終焉」そのものなのです。
ここで疑問となるのが、星の子と悪魔の違いです。星の子そのものは、善悪の概念を持たない純粋無垢な自然現象に近いエネルギー生命体です。しかし、死の恐怖に直面した星の子が人間とある特殊な取り引きを結び、人間の生体エネルギーや魂を取り込んだ瞬間、強大な魔力と邪悪な誘惑を併せ持つ「火の悪魔」へと変容します。カルシファー自身が「おれは悪魔だから約束は守らない」とうそぶいていたように、無垢な星の精霊が人間のエゴや欲望を媒介にして生まれ変わった存在こそが悪魔の正体でした。