世間一般では、「世界屈指のオーケストラ奏者の夫と、欧州の歴史ある街で優雅にお茶を飲むセレブな日々」というステレオタイプな見方がされがちです。しかし、本人の手記や公式インスタグラムの記述を丹念に読み解くと、その実態は驚くほどサバイバル感に満ちています。
冬のオーストリア、とりわけ自然豊かなザルツブルク近郊の山荘では、気温が氷点下10度を下回る日も珍しくありません。暖炉に火をくべるための重い薪を自ら運び、斧を振るって薪を割る作業は、女優の優雅なイメージとはかけ離れた重労働です。広大な庭の急傾斜での草刈り、落ち葉の処理、さらにはドイツ語による公的手続きや職人との直接交渉など、「誰かにやってもらう生活」ではなく「自分の手を動かさなければ生きていけない生活」がそこにあります。
便利さに囲まれた東京であれば、ボタンひとつで済むような家事や維持管理を、あえて手作業で引き受けること。それは彼女にとって「人間としての手触りを取り戻す時間」であり、虚飾に塗れがちな芸能界という世界から自分自身を救い出すための、不可欠な解毒作業だったと言えます。