ムカデを観察していると、左右の足の長さが不揃いであったり、途中の足が数本欠落している個体を見かけることがあります。野外調査や生体飼育の現場では、ムカデが持つ驚異的な「自切」と「再生」の能力が日々確認されています。
鳥類やイタチ、ネズミなどの天敵に足を掴まれた際、ムカデは自ら特定の節から足を切り離す自切(じせつ)行動をとります。千切れた足はしばらく激しく痙攣を続け、外敵の注意をそちらに引きつけている間に、本体が暗闇へと逃げ込みます。
失われた足は、そのまま放置されるわけではありません。ムカデは外骨格を持つ節足動物であるため、脱皮を行うことで足を再生させる能力を備えています。現場の飼育記録や観察手記によると、1回の脱皮では元のサイズよりやや短く色素の薄い「ミニチュアの足」が生えてきますが、2回、3回と脱皮を重ねるごとに周囲の歩肢と全く見分けがつかない完全なサイズと機能を取り戻します。激しい生存競争を生き抜くために、足の数を柔軟にリセットできる再生システムが備わっています。