投資商品の案内で目にする「利回り」という言葉には、大きく分けて表面利回り(グロス利回り)と実質利回り(ネット利回り / NOI利回り)の2種類が存在します。投資初心者が最も陥りやすい落とし穴は、この2つの区別を曖昧にしたまま取引に踏み切ってしまう点にあります。
表面利回りは、運用にかかる維持管理コストや税金などの諸経費を一切排除し、額面の収入と取得金額だけで単純計算した数値です。一方の実質利回りは、運用期間中に発生する管理費、修繕積立金、固定資産税、さらには購入時に要した仲介手数料や登記費用といった現実の支出を差し引いた上で算出されます。
不動産投資の現場では、ポータルサイトに「利回り12%」と掲示されている中古アパートを目にすることが珍しくありません。しかし、現場取材や投資家の実例を検証すると、築古物件ほど給排水管の更新や外壁修繕、退去時の原状回復費用が重くのしかかり、諸経費を引いた実質利回りはわずか3%台にまで急落する事例が日常茶飯事となっています。額面の高利回りは、市場がその物件に対して「高いリスク」を織り込んでいるシグナルに過ぎないという真実を直視しなければなりません。