競馬史における最大のハプニングとして今なお語り継がれるのが、2015年6月28日の第56回宝塚記念です。前人未到の宝塚記念3連覇がかかったゴールドシップは、単勝オッズ1.9倍の圧倒的1番人気に支持されていました。
阪神競馬場のスタンドが異様な熱気に包まれる中、ゴールドシップはゲート入り直後から激しく首を振り始めます。隣の枠に入ったトーホウジャッカルを威嚇するように咆哮すると、ファンファーレの興奮が冷めやらぬ発走の瞬間、ゲート内で大きく立ち上がってしまったのです。そのまま出遅れたゴールドシップは後方のまま見せ場なく15着に大敗。ゴールドシップ絡みで購入されていた約120億円分の馬券が一瞬にして消え去り、競馬場は悲鳴とどよめきに包まれました。
当時の特番インタビューや手記で、主戦を務めていた横山典弘騎手は「ゲートの中で隣の馬に怒って威嚇していた。あの状態では止めようがなかった」と振り返っています。須貝尚介調教師もレース後の公式会見で悔しさを滲ませつつ謝罪の言葉を述べましたが、ファンやネットコミュニティからは「これぞゴールドシップ」「怒る気すら起きない」という奇妙な納得感が広がりました。計算されたサボりなのか、それとも突発的な感情の爆発だったのか――この120億円事件こそ、彼の制御不能なカリスマ性を決定づけた瞬間でした。