インターネット上の掲示板やSNSでは、カラオケに関する誤った思い込みが根強く残っています。その最たるものが「原曲キーで歌わないのは逃げでありダサい」という誤解と、「テンポの遅いバラードなら簡単である」という盲点です。
音響工学およびボイストレーニングの観点から言えば、原曲キーへの盲目的な固執ほど歌唱のクオリティを破壊する行為はありません。歌手本人は自身の声帯の長さと厚みに最も適したキーでレコーディングを行っています。他人の声帯サイズに作られた服を無理やり着てボタンが弾け飛ぶように、声の低い男性がハイトーンアーティストの原曲キーを無理に追えば、喉を痛め、音程は崩壊します。キーを「#2」や「♭3」に変更し、自分の声帯が最も共鳴するポジションに設定することこそが、真に歌が上手い人のスマートな振る舞いです。
また、「スローバラード=簡単」という認識も重大な罠です。テンポが極端に遅い楽曲は、1音1音の長さ(ロングトーン)が引き伸ばされるため、音程の不安定さや息切れ、声の震えが聴き手にダイレクトに伝わってしまいます。音痴でも高得点が出せる曲(男性)を探すならば、むしろミディアムテンポ(BPM100〜120程度)で、一定のリズムが刻まれているポップスや軽快なロックを選ぶのが現場における賢明な判断です。
男性向けモテるカラオケ曲や、カラオケで盛り上がる男性曲の選び方においても、プロ級のハイトーンを披露することより「無理をせず安定した声で、楽しそうにリズムに乗っている姿」を見せる方が、同席者に圧倒的な安心感と好印象を与えます。力んだ絶叫は聞き手に無意識の緊張感を強いるため、心理的にも逆効果となりやすいのです。