『イナズマイレブン』が社会現象にまで拡大した最大の契機は、ゲーム発売前から緻密に計算されたメディアミックスの設計にあります。当時、『レイトン教授』シリーズの世界的成功で勢いに乗っていたレベルファイブを率いる日野晃博氏は、漫画雑誌『月刊コロコロコミック』での先行連載、テレビ東京系列でのアニメ放送、そしてニンテンドーDSのタッチペン機能をフル活用したゲームソフトの投入を寸分の狂いもなく同期させました。
コロコロコミック連載当時の反響は凄まじく、読者の小学生男子の間では「ゴッドハンド」や「ファイアトルネード」といった必殺技のポーズを真似ることが瞬く間に日常化しました。当時の特番インタビューや自著・手記で日野氏が「子どもたちが本当にカッコいいと憧れる、嘘のない熱量を注ぎ込んだ」と語った通り、従来の育成サッカーゲームにはなかった「必殺技で相手ゴールを粉砕する」というケレン味溢れるゲーム性が児童層の心を鷲掴みにしたのです。
加えて、1,000人以上におよぶスカウト可能な選手キャラクター、自分だけの最強チームを編成できるRPGとしてのやり込み要素が、携帯ゲーム機の通信機能と絶妙にマッチしました。公園や学校の教室でDSを持ち寄り、対戦・トレードに明け暮れる光景は、まさに平成後期の放課後を象徴する光景となりました。