物語の起点となるのは、風情ある坂道と穏やかな瀬戸内海が広がる広島県尾道市だ。主人公のルーツであり、孤独な青春時代を過ごしたこの街の風景が、作品全体に深いノスタルジーと情感を与えている。ノスタルジックな港町の路地裏で育まれた挫折と希望が、過酷な角界という勝負の世界と鮮烈な対比を描き出す。
本作は、単に勝ち負けを追うスポーツ作品の枠組みを遥かに超えている。家族の愛憎、故郷への郷愁、そして己の弱さと向き合う一人の人間の心理を精緻に穿つ本格派ヒューマンドラマとして緻密に構成されており、観る者の心を激しく揺さぶる。