彼女の才能が世に知れ渡る契機となったのは、他者に対して恋愛感情も性的欲求も抱かない男女の同居生活を描いた『恋せぬふたり』だった。この作品で第40回向田邦子賞を受賞した吉田恵里香は、既存の恋愛至上主義に疑問を投げかけ、新たな関係性のあり方を提示して批評家筋を唸らせた。また、『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』では、ファンタジーの皮を被りながら他者への思いやりと自己肯定感を繊細に描き切り、国内外で爆発的な支持を獲得している。
その筆先は実写のテレビドラマにとどまらない。アニプレックスが制作を手がけたアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』ではシリーズ構成・脚本を担当。極度の人見知りで陰キャな少女の心理を、リアルかつポップなユーモアで表現し、世界的な大ヒットへと導いた。実写とアニメ、深夜帯と朝の全国放送。あらゆるジャンルの垣根を軽々と飛び越えるその柔軟性は、現代の脚本家の中でも稀有な存在だ。