石田徹也の作品群において最も象徴的なのは、ほぼすべての画面に登場する「画家の分身のような青年」です。短髪で虚ろな目をした男は、しばしば石田自身の顔立ちと酷似しており、鑑賞者に強烈な心理的圧迫感を与えます。
彼の画業を語る上で外せない代表作一覧の中でも、特に重要な意味を持つのが以下の作品です。
- 『飛べなくなった人』(1996年):人力飛行機の機体と人間がグロテスクに融合し、大空へ飛び立つ自由を奪われた青年の絶望を描いた初期の金字塔。
- 『回収』(1998年):ゴミ袋や不用品回収車と一体化した人々を通じ、社会に使い捨てられる労働者の悲哀を冷徹に描写。
- 『囚人』(1999年):学校の机や校舎に縛り付けられた少年たちを通じ、日本の管理教育システムの息苦しさを痛烈に風刺。
- 『めばえ』(1998年):少年の頭部から巨大な植物の芽が突き破るように生え出ている、痛覚を伴うシュルレアリスム的名作。
作品に登場する青年の姿について、石田自身は生前「自画像を描いているつもりはない」と語っていました。彼が描いていたのは自分個人の悲痛ではなく、社会システムに組み込まれ、匿名化された現代人の心理状態そのものでした。自己の内面を極限まで掘り下げることで、結果として誰もが抱える不安や痛みを映し出す普遍的な鏡となっていたのです。