ほうれん草を口にした際、歯の表面がザラついたり、舌に刺さるようなえぐみを感じたりした経験を持つ人は多いはずです。その原因物質こそがシュウ酸(Oxalic acid)です。日本泌尿器科学会の診療ガイドライン等でも指摘されている通り、日本人の尿路結石症の約8割を占める「カルシウム結石」は、食事から摂取された過剰なシュウ酸が腸管内でカルシウムと結合しきれず、尿中でカルシウムと結合して結晶化することで引き起こされます。これがまさに、アク抜きが必要な理由の根幹に他なりません。
激痛を伴う尿路結石予防とシュウ酸対策において、ほうれん草の下茹では極めて有効な防衛策です。シュウ酸は水溶性の有機酸であるため、多めの熱湯で茹でることによって組織外へ溶け出します。検証データによると、適切な下茹でを行うことで葉に含まれるシュウ酸の約70〜80%を除去できます。反対に、下茹でをせず直接スープや炒め物に投入してしまうと、溶け出したシュウ酸を汁ごと全て摂取することになり、結果的に身体へ高濃度のシュウ酸を取り込むことになります。
さらにシュウ酸には、ほうれん草自体に豊富に含まれる鉄分や、体内のカルシウムと強固に結合してミネラルの吸収を阻害する「反栄養素」としての側面も存在します。味覚上の美味しさのみならず、栄養学的にも生体安全面からも、正しいシュウ酸の抜き方を実践することは譲れない必須条件なのです。