ゴラムという奇怪な生物の正体は、かつてアンドゥイン川のほとりに暮らしていたホビットの祖先にあたる「ストゥア派」の青年、スメアゴルです。彼は決して生まれつき怪物だったわけではありません。
彼の運命が狂ったのは、友人デアゴルと共に川で釣りをしていた日のことでした。デアゴルが川底から偶然拾い上げた「一つの指輪」の邪悪な魔力に瞬時に魅入られたスメアゴルは、誕生日プレゼントとして指輪を譲るよう要求し、拒否されるとデアゴルの首を絞めて殺害してしまいます。指輪を手に入れたスメアゴルは、姿を消す能力を悪用して盗みや悪事を重ねたため、一族から追放され、光を嫌って霧ふり山脈の暗黒の洞窟へと身を潜めることになりました。
彼があのような骨と皮ばかりの痩せ衰えた姿、光を恐れる巨大な眼球、水掻きのついた手足へと変化した理由は、一つの指輪が持つ邪悪な力と、500年近くに及ぶ過酷な暗闇での孤立生活にあります。本来、ホビット族の寿命は100歳前後ですが、指輪の魔力によって肉体の老化が不自然に引き延ばされ、最終的にゴラムは約589歳という異常な長寿を迎えることとなりました。肉体だけでなく精神も蝕まれ、喉を鳴らす不快な音「ゴラム」がそのまま彼の名として定着してしまったのです。
スメアゴルとゴラムの決定的な違い|善悪がせめぎ合う二重人格
作中で描かれるスメアゴルとゴラムは、完全に分離した二重人格として機能しています。この内的葛藤こそが、単なる悪役ではない深い悲哀をキャラクターに与えています。
- スメアゴル(本来の人格):かすかに残る良心、友情への憧れ、主君に従順であろうとするナイーブで臆病な性格。フロドの優しさに触れたことで一時的に表層へ現れます。
- ゴラム(指輪が生んだ邪悪な人格):猜疑心に満ち、暴力的で狡猾。指輪を取り戻すことだけを目的に他者を平然と裏切る冷酷な怪物。